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HEADLINE NEWS:2015年
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2015年度立命館大学・大学院入学式 学長式辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ご家族の皆様、ご子息、ご息女のご入学、おめでとうございます。また、学部での勉学を終え、さらに、大学院に進んで、高度な勉学へと向かわれる皆さん、ご進学、おめでとうございます。
立命館大学長として、皆さんを心から歓迎いたします。
本年度、立命館大学には、7,608人の新入生を迎えました。また、大学院には、1,141人の皆さんが進学しました。さらに世界から、297人の留学生を迎えました。このように、立命館大学は、旺盛な研究の気風と、国際的な環境の下で学ぶ条件に溢れています。この環境を我が物にしてほしいと思います。
さて立命館は、来る5月19日に創立115周年を迎えます。現在、日本には約800の大学がありますが、戦前に設立された大学は48校しかありません。立命館大学もその一つです。これから皆さんは、このような歴史と伝統を有する立命館で学ぶことになります。
同時に今年は、戦後70年という節目の年です。立命館大学は「平和と民主主義」を教学理念に掲げ、国際的にも誇ることのできる「平和ミュージアム」を設置しています。ここには、毎年、全国から多くの修学旅行生が訪れ、平和の大切さを学んでくれています。戦後70年という歴史を踏まえ、今年は、平和をテーマとする、さまざまな行事が計画されていますが、皆さんには、このような行事に積極的に参加し、改めて「平和」な世界の実現に何ができるか、考えてほしいと思います。
皆さんは、これから大学生としての生活が始まります。20歳前後は人間最も大きく成長する時期です。大学4年間の過ごし方が人生のベースを作るといっても言い過ぎではありません。人間関係もこれまでとは比較にならないほど広がるはずです。また、思い悩むことも複雑になります。しかし、このような問題に直面したときは、一人で悩まず、友人と一緒に考えてみてください。ともに考えてくれた友人は、きっと生涯の友人になるはずです。もう一つ重要なことは健康に関心を持つことです。20歳前後に作りあげられた身体は、これからの皆さんの人生を支えてくれるでしょう。
さて、皆さんは、本日、大学・大学院に入学しました。大学は、社会に巣立つ直前の教育機関なのですから、社会に出てその一員として悔いのない活動ができるように、しっかりとした力量を獲得する必要があります。では、どのような力をつけるべきでしょうか。
ご承知のように、現在、グローバル化が急速に進んでいます。皆さんが、いずれその一員になっていく社会は、世界とのつながりと無縁であることは考えられません。たとえば、国際的な企業で働く場合はもとより、例えば地方公務員として働く場合でも、そこでは多くの外国から来た人々の行政でのニーズに対応していくことになります。当然、外国語の能力が、必要となります。しかし、外国語が話せるとしても、大事な点は、「何を話すか」です。そのためには、世界の歴史や、それぞれの国に関する深い理解と、自分の国やふるさとを語る能力が必要です。国際的なコミュニケーション能力は、単なる会話の能力ではありません。内容を伴った会話を可能にする価値ある教養こそが必要なのです。
また、今日の社会は、高度な理論と技術、創造的発見能力が必要とされる時代であり、このような社会は一般に「知識基盤社会」と呼ばれています。このような社会で求められる能力は、すぐに役立つ知識のみではありません。そのような知識は、科学技術の変化の早い現代では、すぐに陳腐化します。新たな問題に挑戦し、イノベーションを創出できる能力が求められています。だからこそ重要なことは、大学時代に、学び続ける方法や態度を身につけることです。大学とは、「学び方を学ぶ場所」なのです。是非、物事を捉える視点や方法を学び取ってください。その基本は読書です。友人から、「今、どんな本を読んでいるか」と聞かれたら、いつでもすぐにタイトルが言える、そんな学生生活を送ってください。
近年、立命館大学では「Beyond Borders(壁を超えよう)」というキャッチフレーズを用いています。これは、皆さんに国境、人種、宗教、性別、価値観、言語などのさまざまなボーダーを超えていってほしいという思いと、自分の中にある限界を超えていくようにチャレンジしてほしいという願いを込めています。そして、何らかの壁を超えようとしたとき、そこには一定の判断が求められます。言い換えれば、自分自身で確固とした判断をすること、つまり、自己決定が迫られます。そのとき、的確な判断をする能力を育てておかなければなりません。
このようなさまざまな能力を身に付ける大学は、決して一人で学ぶ場所ではありません。もとより、一人で学習することは、勉強の基本です。しかし、それで済むのであれば、大学は不要です。本学は、全国から、そして、世界各地から学ぶ仲間が集っています。下宿生が半数を数えます。そのような多様な国・地域・環境で育った学生が、ここ立命館に集っているのです。これらの学ぶ仲間と切磋琢磨していくことが大学での学びであるといえます。
このような環境を前提に、重要になるのが、コモンズとしての大学という考え方です。コモンズは「共有知」を意味している言葉です。ここには人々が自由に出入りし、人々の出会いがあり、その交流を通じて、さまざまな経験や情報の交換が行われます。これからの大学は、このようなコモンズでなければなりません。立命館大学では、それぞれのキャンパスに「ラーニング・コモンズ」を設けています。このような学びの環境を存分に利用し、学生同士、学生と教員、留学生と日本人学生で学び合いをしてください。
立命館は、「未来」という言葉を大切にしています。元総長の末川博先生が述べられた有名な言葉に「未来を信じ、未来に生きる」という言葉があります。衣笠キャンパスの正門を入った右側に、この言葉を刻んだ石碑が立っています。実は、この「未来を信じ、未来に生きる」という言葉には続きの言葉があります。「ここに青年学徒の生命がある」という言葉です。そこにこめられたメッセージが大事です。何が青年を特徴づけるかと言えば、次の時代を担っていく主人公・主体だという点です。皆さん、一人ひとりが主人公なのです。しかし、私たちは、一人で生きているのではないということも忘れてはなりません。私たちは社会の一員であり、日々消費しているもの一つをとっても、自分で作ったものはありません。それを作ってくれている人から、私たちは生きていくことができるのです。そうであれば、皆さんも自分なりのやり方で、「社会のためになろう」という志を持ってほしいと思います。そして、社会で困っている人に共感できる人間になってください。そのためには、現実を知らなければなりません。大胆にさまざまな場面に身をおいて、自分の目で現実に触れるようにしてください。
最後に、立命館の意味を知ってほしいと思います。立命館大学は、大学の校名自体にメッセージが込められています。「妖寿たがわず、身を修め、もってこれを待つは、命を立つるゆえんなり」、という孟子の尽心章句にその起源があります。「命を立つる館」である立命館とは、「修養を積んで、人生を切り開いていく場所」という意味です。ここ立命館で学んでいく皆さんは、人生を切り開いていく力を獲得してほしい、それが学長としての願いであります。そのために、立命館大学は、皆さんを最大限サポートすることをお約束し、学長の式辞といたします。
2015年4月2日 立命館大学長 吉田美喜夫
立命館大学長として、皆さんを心から歓迎いたします。
本年度、立命館大学には、7,608人の新入生を迎えました。また、大学院には、1,141人の皆さんが進学しました。さらに世界から、297人の留学生を迎えました。このように、立命館大学は、旺盛な研究の気風と、国際的な環境の下で学ぶ条件に溢れています。この環境を我が物にしてほしいと思います。
さて立命館は、来る5月19日に創立115周年を迎えます。現在、日本には約800の大学がありますが、戦前に設立された大学は48校しかありません。立命館大学もその一つです。これから皆さんは、このような歴史と伝統を有する立命館で学ぶことになります。
同時に今年は、戦後70年という節目の年です。立命館大学は「平和と民主主義」を教学理念に掲げ、国際的にも誇ることのできる「平和ミュージアム」を設置しています。ここには、毎年、全国から多くの修学旅行生が訪れ、平和の大切さを学んでくれています。戦後70年という歴史を踏まえ、今年は、平和をテーマとする、さまざまな行事が計画されていますが、皆さんには、このような行事に積極的に参加し、改めて「平和」な世界の実現に何ができるか、考えてほしいと思います。
皆さんは、これから大学生としての生活が始まります。20歳前後は人間最も大きく成長する時期です。大学4年間の過ごし方が人生のベースを作るといっても言い過ぎではありません。人間関係もこれまでとは比較にならないほど広がるはずです。また、思い悩むことも複雑になります。しかし、このような問題に直面したときは、一人で悩まず、友人と一緒に考えてみてください。ともに考えてくれた友人は、きっと生涯の友人になるはずです。もう一つ重要なことは健康に関心を持つことです。20歳前後に作りあげられた身体は、これからの皆さんの人生を支えてくれるでしょう。
さて、皆さんは、本日、大学・大学院に入学しました。大学は、社会に巣立つ直前の教育機関なのですから、社会に出てその一員として悔いのない活動ができるように、しっかりとした力量を獲得する必要があります。では、どのような力をつけるべきでしょうか。
ご承知のように、現在、グローバル化が急速に進んでいます。皆さんが、いずれその一員になっていく社会は、世界とのつながりと無縁であることは考えられません。たとえば、国際的な企業で働く場合はもとより、例えば地方公務員として働く場合でも、そこでは多くの外国から来た人々の行政でのニーズに対応していくことになります。当然、外国語の能力が、必要となります。しかし、外国語が話せるとしても、大事な点は、「何を話すか」です。そのためには、世界の歴史や、それぞれの国に関する深い理解と、自分の国やふるさとを語る能力が必要です。国際的なコミュニケーション能力は、単なる会話の能力ではありません。内容を伴った会話を可能にする価値ある教養こそが必要なのです。
また、今日の社会は、高度な理論と技術、創造的発見能力が必要とされる時代であり、このような社会は一般に「知識基盤社会」と呼ばれています。このような社会で求められる能力は、すぐに役立つ知識のみではありません。そのような知識は、科学技術の変化の早い現代では、すぐに陳腐化します。新たな問題に挑戦し、イノベーションを創出できる能力が求められています。だからこそ重要なことは、大学時代に、学び続ける方法や態度を身につけることです。大学とは、「学び方を学ぶ場所」なのです。是非、物事を捉える視点や方法を学び取ってください。その基本は読書です。友人から、「今、どんな本を読んでいるか」と聞かれたら、いつでもすぐにタイトルが言える、そんな学生生活を送ってください。
近年、立命館大学では「Beyond Borders(壁を超えよう)」というキャッチフレーズを用いています。これは、皆さんに国境、人種、宗教、性別、価値観、言語などのさまざまなボーダーを超えていってほしいという思いと、自分の中にある限界を超えていくようにチャレンジしてほしいという願いを込めています。そして、何らかの壁を超えようとしたとき、そこには一定の判断が求められます。言い換えれば、自分自身で確固とした判断をすること、つまり、自己決定が迫られます。そのとき、的確な判断をする能力を育てておかなければなりません。
このようなさまざまな能力を身に付ける大学は、決して一人で学ぶ場所ではありません。もとより、一人で学習することは、勉強の基本です。しかし、それで済むのであれば、大学は不要です。本学は、全国から、そして、世界各地から学ぶ仲間が集っています。下宿生が半数を数えます。そのような多様な国・地域・環境で育った学生が、ここ立命館に集っているのです。これらの学ぶ仲間と切磋琢磨していくことが大学での学びであるといえます。
このような環境を前提に、重要になるのが、コモンズとしての大学という考え方です。コモンズは「共有知」を意味している言葉です。ここには人々が自由に出入りし、人々の出会いがあり、その交流を通じて、さまざまな経験や情報の交換が行われます。これからの大学は、このようなコモンズでなければなりません。立命館大学では、それぞれのキャンパスに「ラーニング・コモンズ」を設けています。このような学びの環境を存分に利用し、学生同士、学生と教員、留学生と日本人学生で学び合いをしてください。
立命館は、「未来」という言葉を大切にしています。元総長の末川博先生が述べられた有名な言葉に「未来を信じ、未来に生きる」という言葉があります。衣笠キャンパスの正門を入った右側に、この言葉を刻んだ石碑が立っています。実は、この「未来を信じ、未来に生きる」という言葉には続きの言葉があります。「ここに青年学徒の生命がある」という言葉です。そこにこめられたメッセージが大事です。何が青年を特徴づけるかと言えば、次の時代を担っていく主人公・主体だという点です。皆さん、一人ひとりが主人公なのです。しかし、私たちは、一人で生きているのではないということも忘れてはなりません。私たちは社会の一員であり、日々消費しているもの一つをとっても、自分で作ったものはありません。それを作ってくれている人から、私たちは生きていくことができるのです。そうであれば、皆さんも自分なりのやり方で、「社会のためになろう」という志を持ってほしいと思います。そして、社会で困っている人に共感できる人間になってください。そのためには、現実を知らなければなりません。大胆にさまざまな場面に身をおいて、自分の目で現実に触れるようにしてください。
最後に、立命館の意味を知ってほしいと思います。立命館大学は、大学の校名自体にメッセージが込められています。「妖寿たがわず、身を修め、もってこれを待つは、命を立つるゆえんなり」、という孟子の尽心章句にその起源があります。「命を立つる館」である立命館とは、「修養を積んで、人生を切り開いていく場所」という意味です。ここ立命館で学んでいく皆さんは、人生を切り開いていく力を獲得してほしい、それが学長としての願いであります。そのために、立命館大学は、皆さんを最大限サポートすることをお約束し、学長の式辞といたします。
2015年4月2日 立命館大学長 吉田美喜夫
