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理工学部 教授 谷泰弘研究グループ

ガラス研磨における酸化セリウム使用フリーの研磨技術を開発

―レアアースフリーのガラス研磨を実現へ ―


 

 理工学部 教授・谷泰弘の研究グループは、㈱アドマテックス(本社:愛知県みよし市 代表取締役:安部 賛)、㈱クリスタル光学(本社:滋賀県大津市 代表取締役社長:桐野 茂)、九重電気㈱(本社:神奈川県川崎市 代表取締役:篠塚 豊)との共同研究開発で、複数の新たなガラス研磨材料の開発に成功し、レアアースフリーのガラス研磨技術を実現しました。

 

 本研究開発は、経済産業省/NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「希少金属代替材料開発プロジェクト」の一環として行われ、レアアース(希土類)の一種で液晶テレビ等のガラス基板の研磨材(※)として使われる酸化セリウムの使用量低減と代替材料の開発に関して取り組んできました。
 新たに開発した研磨技術の一つは、酸化セリウム砥粒の代わりに、金属の酸化物粉を入れた酸化ジルコニウム砥粒を用いたものです。仕上がりの品質は維持したまま、ガラスを平滑化する時間が従来の2/3にできることを確認しました。
 もう一つの技術は、酸化セリウム砥粒の代わりに、金属塩を加えた酸化ジルコニウム砥粒を用いたものです。同じ研磨時間で、より平滑性に優れた仕上がりになることを確認しました。これら技術により、セリウムフリーでの研磨が可能となります。

 今回の成果となる研磨技術は、本年4月から共同研究開発グループのアドバイザーとなっている企業での評価に移り、早期の上市を目指します。

 つきましては、本研究成果についてご報告申し上げます。

 

(※)研磨材:研磨において機械的除去作用を行う硬質な粒子。砥粒ともいう。液体に分散したものを研磨剤と呼ぶ。

 

 

1. 背景

 

 希少金属(レアメタル・レアアース等)は、日本の成長を支える産業にとって必要不可欠な材料ですが、特定産出国への依存度が高く、その供給リスク(注1)が 経済成長の懸念要因となっています。NEDOでは、この対策の一環として2007年度から、インジウム、ジスプロシウム、タングステン、2009年度からは白金族、セリウム、テルビウム・ユーロビウムの使用量低減技術および代替材料開発を委託事業として実施しています。本研究では、研磨を砥粒、メディア 粒子(注2)、工具、プロセス技術の4要素(注3)に分けた開発を行うことにより酸化セリウム砥粒の使用量低減、代替材料の開発に取り組んでいます。(図1)

 

図1

                              図1 研究体制と研究内容


2. 今回の研究成果

 

(1)金属酸化物粉を共存させた酸化ジルコニウム研磨
 本研究では、従来からガラス研磨で用いられてきた酸化セリウム砥粒を使用しないプロセス技術について研究開発を進め、研磨加工時の砥粒滞留性(注4)の向上方法を検討致しました。その結果、酸化ジルコニウム砥粒を用い、この砥粒よりも粒径が小さく、軟質で高比重の金属酸化物を加えれば、図2に示されるように、酸化セリウムと比較して2/3の短い時間でガラス面が平滑化できることがわかりました。
 (株)クリスタル光学では、種々の金属酸化物の種類と組み合わせを検討し、酸化錫、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀、酸化タングステンなどの高比重酸化物 でこの効果を確認しています。また、酸化ジルコニウム砥粒の原料で価格が安いジルコンサンド(珪酸ジルコニウム)を砥粒として用いた場合も、酸化セリウム 並みの優れた研磨特性が得られることが確認できました。これら成果は、酸化セリウムを全く用いずに、供給リスクの無い、価格の安い代替砥粒の使用が可能になることを意味しています。

 

 図2

図2  酸化物添加の効果

 

 

(2) 金属塩を添加した酸化ジルコニウム研磨
 本研究では、従来からガラス研磨で用いられてきた酸化セリウム砥粒を使用しないプロセス技術について研究開発を進め、研磨時のガラス面に化学的作用を加 える研磨方法を検討いたしました。その結果、酸化ジルコニウム砥粒を用い、添加材として硫酸第一鉄を1wt%加えることで、酸化セリウムでは達成できな かったガラス面の平滑化に時間短く到達できることを明らかにしました。硫酸第一鉄は水に易溶で、マイルドな酸としてガラス表面に作用することで鏡面化を促進すると考えられます。㈱クリスタル光学では、種々の金属塩での検証と効果の確認、原理検討を進めています。この成果は、プロセス技術として現場に応 用し易い技術が確立できたことを意味しています。

 

 

3. 今後の予定

 

 今後、本研究では効果的な添加物の検討、メカニズムの検討による原理解明を引き続き行い、本年4月からグループのアドバイザーとなっている企業での評価を開始し、早期上市を目指します。また、本研磨の原理は、ガラス研磨時のラッピング(前処理の粗研磨)や、ガラス以外の研磨対象基板に対しても効果が期待されるため、今後の検討課題としていきます。

 

 

 

<用語解説>

(注1)レアアースの供給リスク

本グループの研究対象となっているセリウムは、レアアースのうち軽希土類に属するもので特定の産出国に供給を依存しています。セリウムは、産出国の政策 変更を契機に、輸入価格が2010年7月の11ドル/Kgから、2011年7月の175ドル/Kgと16倍にも高騰し、入手難も起こりました。現在も40 ドル/Kg前後で推移しています。このような状況に対し、酸化セリウムを使用している企業は、本プロジェクトで公表した技術を参考に、あるいは、使用量低 減や代替材料開発を経済産業省/NEDOで行った2010年度の補正事業、2011年度の補正事業による支援を受け、また、独自の使用量低減技術の開発を 進め、酸化セリウムの輸入量は、1年前の1万から半減しています。また、休止鉱山の再開、新規鉱山の開発が世界各地で行われておりセリウムの特定産出国へ の依存によるリスクは低減してくると思われています。本成果は、このセリウムを使わない研磨技術を確立したもので、レアアースリスクの解消につながる技術 です。

(注2)メディア粒子

砥粒を保持したり、切りくずを付着させたり、工具面を保護したり、研磨剤の粘度  を高めたり、砥粒が有する除去作用以外の作用を行う4番目の粒子。

(注3)4要素の研磨(4BODY研磨)

通常の研磨は加工域に砥粒、工作物、工具の3種類の固体が存在する3要素の研磨 (3BODY研磨)での研究開発がおこなわれていたが、本研究では、複合粒子研磨法としてメディア粒子という4番目の固体を提案し、4要素の研磨(4BODY研磨)での技術開発を行っている。

(注4)滞留性

研磨加工時における、ガラス面とパッド面に挟まれた加工領域における砥粒の保持性 (動きにくさ)。

 

 

 

■立命館大学 谷 泰弘研究室のページ
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